「それでは、これから今、準備し終わったヨ
ットを海に出して乗りましょう!」
「どうやって、海に出すんですか?」
美穂ちゃんは、側にいた先生に質問した。
「2人1組でペアを組んでいるのだから、2
人で一緒に船の前と後ろで持ち上げて、この
坂道、スロープを降りましょう。そして、そ
のまま、海にヨットを浮かべます」
先生は、美穂ちゃんに返事した。
「前後でヨットを持つんだってさ」
「それでは、これから今、準備し終わったヨ
ットを海に出して乗りましょう!」
「どうやって、海に出すんですか?」
美穂ちゃんは、側にいた先生に質問した。
「2人1組でペアを組んでいるのだから、2
人で一緒に船の前と後ろで持ち上げて、この
坂道、スロープを降りましょう。そして、そ
のまま、海にヨットを浮かべます」
先生は、美穂ちゃんに返事した。
「前後でヨットを持つんだってさ」
「でも、その前にちゃんとライフジャケット
を着用してからにしましょう」
先生は、美穂ちゃんの着ているライフジャケ
ットの前側に付いているジッパーを上までし
っかり上げて着用させた。
「皆も、ライフジャケットの前のジッパーを
ちゃんと上げていない人は、しっかりジッパ
ーを上まで上げて着用してください!」
先生は、美穂ちゃんだけでなく、美穂ちゃん
の周りにいた生徒たちにも伝えた。
「そうだ!皆さん、ヨットで海に出る前に、
今一度、自分の着ているライフジャケットの
前ジッパーが上がっているかどうか、ちゃん
と着用できるか確認してください!」
片桐先生も、大声で生徒たちに伝えていた。
洋ちゃんも、健ちゃんも自分の着ているライ
フジャケットを改めて確認した。
「俺は大丈夫だ」
「健ちゃん、ジッパー開いてるよ」
洋ちゃんは、健ちゃんのジッパーを上げた。
「洋ちゃん、僕のライフジャケットもう大丈
夫かな?ちゃんと着れているかな」
健ちゃんが、再度洋ちゃんに確認した。
「うん、大丈夫!ちゃんと着れているよ」
洋ちゃんは、健ちゃんのライフジャケットを
もう一度確認してから答えた。
「俺は大丈夫かな?」
「大丈夫!」
洋ちゃんは、隣にいた別の子のライフジャケ
ットまで確認してあげていた。
「ライジャケの確認が終わった子から、順番
にヨットを海に出しましょう!」
片桐先生が、皆に指示を出していた。
「俺らも、海にヨットを出そうか」
洋ちゃんは、一緒にペアで乗る健ちゃんに言
うと、船の前後を2人で持ち上げて、スロー
プを降り始めた。
「地面が濡れてて足が滑る」
「いいよ、気をつけながらゆっくり進もう」
洋ちゃんは、健ちゃんに言った。
「先生、海に出るのこわいよ」
初めてヨットに乗る子の中には、まだ怖がっ
ている子も何人かいた。
「大丈夫!ほら、見てごらん。沖にボートが
出ているだろう。先生たちが、ボートでちゃ
んとくっついているから、海に落ちてしまっ
ても、すぐに助けて上げられるから」
先生たちは、怖がっている生徒たちに説明し
ていた。
「絶対に一緒にくっついて来てよ」
そんな中、洋ちゃんと健ちゃんは怖がらずに
一番最初にヨットをスロープから海際に降ろ
して、ヨットを海上に出した。
「俺らも、ヨットを出そうぜ」
洋ちゃん、健ちゃんがヨットを海へ出してい
る姿を見て、他の子たちも洋ちゃん、健ちゃ
んを真似して、自分たちのヨットを持ち上げ
ると、海に降ろし始めた。
「うわっ、水が冷たい」
「でも、なんか気持ちいい」
「そっち持ってよ」
「もう少しゆっくり降ろしてよ」
子供達は、大騒ぎしながらも、ヨットをスロ
ープから海上に降ろし、水面に浮かべた。
「俺、ラダーを持つ方で良いか?」
「うん、じゃ、俺はシートを握って、セイル
を操作するよ」
ヨットを降ろし、海に浮かべ終わった生徒か
ら順番に、海に浮かんでいるヨットの上に乗
りこんで、ヨットを走らせていた。
2人1ペアで乗って、1人は船の後端でティ
ラー、舵を握って握って操船していた。もう
1人は、船の中央部分に乗って、セイルに繋
がっているシート、ロープを操作していた。
岸壁では、まだヨットを海に浮かべようと大
騒ぎしている子達もいた。
「このまま、まっすぐ船を降ろせば、海に浮
かべられるよ」
「待って待って、船は海に入って浮かぶかも
だけど、俺も入って、ズボン濡れちゃうよ」
たけし君は、海に浮かんだヨットのロープを
手から離すと、ズボンが濡れないようにスロ
ープの少し上側に避難した。
「何をやっているんだよ!?手を離したら、
ヨットだけが海に出て行ってしまうよ」
たけし君とペアの長沢が、たけし君に注意し
たが、その時には、海に浮かんだヨットは、
岸を離れて沖へと流されてしまっていた。
「どうするんだよ、俺達のヨット」
長沢が流れていくヨットを眺めていた。
「ヨットだけで、どんどん岸から離れて、無
人で海に行ってしまうよ」
たけし君と長沢の2人は、岸から海に、無人
で行ってしまったヨットを眺めていた。
「もう、あのヨットって海のどっかに行って
しまうじゃん」
たけし君は、諦めたように呟いた。
沖合のボートから見守っていた先生が、流さ
れていくヨットに気づいて、ボートで急いで
近づくと、ロープで引っ張って岸に戻した。
「ありがとうございます!」
たけし君は、ボートで救出してくれた先生に
お礼を言うと、自分たちのヨットによじ登る
と乗り込んだ。
「船を出そうぜ」
長沢もヨットに乗ると、たけし君に言った。
「うん、俺がこっちのシートを持つね」
たけし君が船の中央寄りに座って、セイルの
操作をするメインシートを持った。
「わかった。じゃ、俺はこっちで操船するね
長沢が船の後端に座ると、ラダーに繋がって
いるティラーを持って操船し始めた。
「このまま、沖合いまでヨットを出そうぜ」
2人は、ヨットを操船すると、沖合いの他の
ヨット教室のヨット達が走っている海面まで
走らせた。
生徒達のヨットは、全て海に浮かべられた。
「皆さん、ヨットで沖に出ましょう」
生徒たちが乗り込むと、各ヨットは皆、沖に
向かって走り始めた。
「何処らへんまで走ったら良いんだろう?」
一番最初に、ヨットを海に浮かべて沖まで走
らせた洋ちゃんは、健ちゃんに聞いた。
「さあ、わからない」
「もう少しだけ先へ進んでみようか」
洋ちゃんは、ヨットをさらに沖へ向かって走
らせていた。
「もう、ここら辺で良いんじゃないの。Uタ
ーンして戻ろうよ」
健ちゃんが、洋ちゃんに言った。
洋ちゃんが、ヨットをどんどん沖合いまで走
らせてしまうので、不安になってきた健ちゃ
んだった。
「え、もうここら辺で戻る?」
「うん、戻ろう」
健ちゃんに言われて、洋ちゃんは、ヨットを
Uターンさせて、港に戻リ始めた。
マリーナの方から先生が乗ってきたボートが
2人のヨットに近寄ってきた。
「もっと奥!」
ヨットをUターンしかけていた洋ちゃんに、
ボートの上の先生が叫んだ。
「このボートに乗っているブイを、その先の
海上に浮かべてくるから、そしたら、このブ
イとブイの間を周るように」
先生は、洋ちゃんに指示を出した。
ボートが、さらに沖合いへと走って行ってし
まったので、洋ちゃんもボートの後を追っか
けて、沖に向かってヨットを走らせた。
ボートが、先に沖合まで到着した。
先に沖合に到着したボートは、そこでボート
に載せてきた大きなブイを2個海上に放り投
げ、海上に設置した。
「あのブイとあっちのブイの間を、ぐるぐる
回れと言っていたよね」
「うん、そう言っていた」
健ちゃんが、洋ちゃんに答えた。
2人は、ボートが設置した2つのブイの間を
グルグルと回っていた。
「ちょっと、ブイの間を回っていてくれ」
先生は、2人に声をかけた。
「先生たちは、後ろの方のヨットを迎えに行
ってくるからブイを回りながら待っていて」
そう言うと、先生達の乗るボートは、マリー
ナの方へ戻って行ってしまった。
「もう少し、メインシートを引け!」
「風向きをもっと考えて、シートをもっと出
して走らせろ!」
先生たちは、後ろの方を走っているヨット達
に、ボート上から指示を飛ばしていた。
ボート上から先生たちは、一生懸命に子供た
ちへ乗り方を指導していたのだが、今日初め
てヨットに乗る生徒さんの中には、ぜんぜん
上手く操船できない子も何人かいた。
「はい、沖までボートで引っ張って、連れて
行ってあげるから、このロープの先をヨット
の先端に結びなさい」
最後尾の2艇は、ボートに引っ張ってもらい
ながら、沖合いまで運んでもらっていた。
「ありがとうございます」
「もう少し、セイルを引くように!」
「それじゃ、風に立ってしまっているから、
少し方向を変えないと・・」
少年少女たちは、先生が沖合いに打ってくれ
た2つのブイの間をグルグル回っていた。
子供たちがヨットで回っているのを、先生た
ちは、小型ボートに乗って追いかけ回して、
セイルを引けとか、もっと出せとかって乗り
方を指導していた。
「もっと、セイルを引くんだってさ」
洋ちゃんは、同じヨットに乗っている健ちゃ
んに指示を出していた。
船の前方でメインシートを握っていた健ちゃ
んは、洋ちゃんに指示されるままに、シート
を引いたり出したりしていた。
「このぐらいですかね」
健ちゃんは、メインシートを引きながら、洋
ちゃんに質問した。
「たぶん、そのぐらいじゃないかな」
洋ちゃんは答えた。
「いや、もう少し引きかな」
健ちゃんと同じく、今日初めてヨットに乗る
洋ちゃんにも、どのぐらい引いたら良いのか
はよくわからなかった。
「ね、そろそろ代わらないか」
洋ちゃんは、健ちゃんに聞いた。
「代わるって?」
「だって、ヨットで出航してから、ずっと俺
がラダーを持っているじゃん」
「そうですね」
「今度は、俺が船の前で、そのシートを握っ
ているから、健ちゃんが、こっちに来て、こ
のラダーを操船してほしいんだけど」
洋ちゃんは、健ちゃんに言った。
「いや、操船は洋ちゃんがして下さいよ」
「え、なんで?」
洋ちゃんは、健ちゃんに聞いた。
「ええ、僕は、ヨットのそれって一度も持っ
たことありませんし」
「俺だって、今日初めて持ったんだけど」
洋ちゃんは、答えた。
「でも、操船は、洋ちゃんお願いしますよ」
「まあ、良いけど」
洋ちゃんが、それ以上は健ちゃんに操船を勧
めることはなかった。
「本当は、俺も、ちょっと、そのシートの操
作もやってみたかったんだけど」
元来、インドア派の健ちゃんは、船の前方で
メインシートを持っているだけで、もういっ
ぱいいっぱいになっていた。
「でも、僕に操船しろって言われても、ちょ
っと無理なのでお願いします」
健ちゃんは、洋ちゃんにお願いした。
まだ、ヨットに乗り始めて、午前中も過ぎて
いないのに、早くも陸に戻りたくて仕方がな
い健ちゃんだった。
「もう少し、メインシートを引いてくれる」
「わかりました」
健ちゃんは、洋ちゃんの指示でメインシート
を少し引いた。
お母さんには、1年間ヨット教室に頑張って
通ったら、来年から医大受験用の予備校に通
わせてくれると約束してもらえたのに、まだ
半日だというのに、健ちゃんはもうヨットに
乗るのが嫌になってきていた。
ピピピピー
先生の乗っているボートから笛の音が響いて
そろそろお昼の時間だから1回陸に戻って、
お昼ごはんにしましょうと先生から指示が
あった。
「お昼だってさ」
「陸地に戻るんですよね?」
「戻りましょう」
洋ちゃんは、よほど健ちゃんがお腹を空かせ
ていて、早く陸に戻りたがっているのだと勘
違いしていた。
「Uターンしますか」
洋ちゃんは、健ちゃんに言われて、ヨットを
方向転換して、マリーナに向かった。
「早く陸に戻りましょう!」
「さっき、ヨットを下ろしたスロープから、
今度は逆に上がれば良いんですよね」
洋ちゃんが、健ちゃんに確認した。
「たぶん、そうじゃないかな」
2人の乗るヨットが、沖合いから横浜市民ヨ
ットハーバーまで戻ってきた。
「それじゃ、俺が、このままスロープに突っ
込むから、適当なところで船から降りて、ス
ロープから上げてもらえるかな」
「わかりました」
健ちゃんは、ヨットがスロープに近寄ったら
船から海に飛び降りて、そのまま船を陸地に
上げるつもりでいた。
「そこのヨット、そっちじゃないよ!」
陸で待っていた先生が呼んだ。
「こっちこっち」
洋ちゃんが、スロープの方に向かって、ヨッ
トを進めていると、ポンツーンにいた先生に
手招きされた。
「え、そっちに行くの?」
「こっちにおいで!」
先生は、洋ちゃんたちのことを呼んだ。
「そっちですか?」
よくわからないまま、洋ちゃんは、ポンツー
ンにいる先生の指示通りに、ポンツーンの方
へとヨットを向けた。
洋ちゃんの操船するヨットが、ポンツーンに
近づくと、ポンツーンの先生が手を伸ばして
2人の乗るヨットを捕まえて、付いていた舫
いロープを手に取った。